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従業員にメンタル不調が出たとき、事業場は何をする?|ストレスチェックとの関係と、面接指導の流れ

この記事のポイント

  • すでに不調が出ている方への対応と、ストレスチェックは別のものです。いま起きていることへの対応が先です
  • 面接指導の申出があれば遅滞なく医師の面接指導を行わせ、その後、医師の意見を聴きます。措置を講じない場合も、報告などの対応は義務です
  • 条文が禁じる不利益取扱いは、面接指導の申出をしたことを理由とするものです。そのほかは指針で定められています

従業員にメンタル面の不調が出たとき、まず必要なのは、いま起きていることへの対応です。ストレスチェックは、不調になる前に気づくための仕組みで、すでに出ている不調への対応とは別のものです。

この記事では、不調が出たときの相談先と進め方、ストレスチェックとの関係、高ストレスと出た人に何が起きるのか、申出をした人への不利益取扱いの禁止を解説します。

そもそも、不調への対応とストレスチェックは何が違う?

ストレスチェックは、不調になる前に気づくための仕組みです。 すでに不調が出ている方への対応の代わりにはなりません。

ストレスチェックは、年に1回、労働者の心の負担の程度を調べる検査です。結果から、ストレスが高い状態の人を見つけ、必要な場合に医師の面接指導につなげます。

一方、いま出ている不調への対応は、本人の状況に合わせて、医療機関や医師と相談しながら進めるものです。

この記事は、制度の説明です。個々の方の病状や治療についての助言はしません。ストレスチェックの実施機関であるきしべは、主治医ではありません。

いま従業員に不調が出ているとき、まず何をすればよい?

まず、本人の話を聴き、医師などの専門家に相談できる先を確保します。 ストレスチェックの実施を待つ必要はありません。

産業医がいない事業場の相談先

50人未満の事業場には、産業医の選任義務がありません(ストレスチェック指針 第12(4))。社内に医療職がいなくても、相談先はあります。

  • 本人の主治医(かかっている医療機関)
  • 地域産業保健センター(面接指導を無料で依頼できる窓口。小規模事業場マニュアル p.15)
  • 契約している外部の医師

地域産業保健センターは、ストレスチェック自体は実施していません(同 p.15)。役割が違う窓口です。企業規模50人未満の事業場を優先して支援するため、大企業の営業所などでは使えないことがあります。

主治医との関係

治療や診断は主治医の役割で、会社が代わりに行うものではありません。 会社の役割は、働き方を調整することです。

会社が医師の意見を求めるときは、就業の判断に必要な、労働時間や作業の負荷といった勤務の状況を伝えます。これらの情報を医師に渡すことは、指針が事業者に求めています(ストレスチェック指針 8(3))。法令に基づく提供なので本人の同意がなくても第三者提供の制限は受けませんが、渡すことを前もって本人に伝えておくことが望まれます(小規模事業場マニュアル p.21)。勤務の状況が伝わらないと、医師は就業の判断をしにくくなります。

就業上の措置

措置の内容は、医師の意見を踏まえて決めます。 区分は、通常勤務、就業制限、要休業の3つです(ストレスチェック指針 8(4))。

  • 就業制限:労働時間の短縮、時間外労働の制限、作業の転換、就業場所の変更など
  • 要休業:休暇や休職などで、一定期間勤務させない措置

決める前に、本人の意見を聴き、十分に話し合って了解が得られるよう努めることが、指針に書かれています(ストレスチェック指針 8(5))。

ストレスチェックは、不調の「前」にどう役立つ?

ストレスチェックは、本人が自分の状態に気づくきっかけをつくります。 結果は実施者から本人に直接通知されます(労働安全衛生法 第66条の10 第2項)。

実施すれば不調を防げる、というものではありません。結果をどう使うかは、本人の意思と、その後の話し合いにかかっています。

なお、長期の病休中の人には、実施しなくても差し支えないとされています(Q&A Q3-7)。休職中の人への実施を迷うときの目安になります。

ストレスチェックで高ストレスと出た人に、何が起きる?

高ストレスと出ただけでは、面接指導は始まりません。 本人の申出があってはじめて、事業者が面接指導を行わせる流れになります。

面接指導の対象になるには、3つの段階を踏みます(労働安全衛生規則 第52条の15)。

  1. 検査の結果、心理的な負担の程度が高いと判定される
  2. 実施者が、面接指導を受ける必要があると認める
  3. 本人が申し出る

申出があったあとの流れ

申出があったら、事業者は遅滞なく医師の面接指導を行わせます(労働安全衛生法 第66条の10 第3項、労働安全衛生規則 第52条の16 第2項)。

面接指導のあとの流れは、次のとおりです。

段階内容根拠
面接指導医師が行う。産業医でなくてもよい労働安全衛生法 第66条の10 第3項/Q&A Q12-1
医師の意見聴取面接指導の後、遅滞なく、就業上の措置について医師の意見を聴く労働安全衛生法 第66条の10 第5項/労働安全衛生規則 第52条の19
就業上の措置医師の意見を勘案し、必要があると認めるときに講じる労働安全衛生法 第66条の10 第6項
記録の保存面接指導の結果の記録を5年間保存する労働安全衛生規則 第52条の18

費用は事業者の負担で、保険診療にはできません(Q&A Q0-5・Q12-5)。

措置をとらないときも、報告は義務

措置を講じない場合も、医師の意見の衛生委員会等への報告その他の適切な措置は義務です(労働安全衛生法 第66条の10 第6項)。

医師の意見を聴いたうえで、何をするかには裁量があります。しかし、意見を聴いたあとに何もしない、という選択肢は条文上ありません。

医師が事業者に出す意見書には、診断名や検査値などの詳しい医学的情報は書きません(ストレスチェック指針)。就業区分と、必要な措置の内容・理由が中心です。

申出をすると、会社には分かる

申出の相手は事業者です。そのため、申出をした人が高ストレスであることは、事業者に分かります。この点は、申出を勧める側も、申出をする側も、あらかじめ知っておく必要があります。

申出をした人に、不利益な取扱いをしてはいけないのはなぜ?

申出をしたことを理由とする不利益な取扱いは、法律で禁じられています(労働安全衛生法 第66条の10 第3項 後段)。申出をした人が高ストレスだと事業者に分かる以上、その不安を取り除く必要があるためです。

条文が禁じているのは、この「申出をしたことを理由とするもの」の1類型です。ほかの類型は、条文ではなく指針で定められています。

類型定めているもの
面接指導の申出をしたことを理由とする不利益取扱い労働安全衛生法 第66条の10 第3項 後段(条文)
ストレスチェックを受けないこと、結果の提供に同意しないこと、申出をしないことを理由とするものストレスチェック指針
医師の意見を聴かない、または医師の意見と著しく異なるなど、要件を満たさない不利益取扱いストレスチェック指針
面接指導の結果を理由とする解雇、有期契約の不更新、退職勧奨などストレスチェック指針

受検しない人への扱いについては、別の記事で詳しく説明しています。

→ ストレスチェックを受けない従業員に、受けさせられる?|受検義務がない理由と、受けてもらう伝え方

まとめ

すでに不調が出ている方への対応は、ストレスチェックとは別に、先に進めます。医師などの相談先を確保し、勤務の状況を伝えながら、本人と話し合って働き方を決めていきます。産業医がいない事業場でも、面接指導をする医師は産業医でなくてかまいません。

ストレスチェックで高ストレスと出た人には、本人の申出を受けて、面接指導、医師の意見聴取、就業上の措置という流れがあります。申出をしたことを理由とする不利益取扱いは禁じられており、措置を講じない場合も報告などの対応は義務です。まずは、社内で相談先をどこに置くかを決めることから考えてみてください。制度についての細かな疑問は、下のページにまとめています。

→ よくあるご質問

よくある質問

Q. ストレスチェックで高ストレスと出た人に、会社が面接指導を受けさせられますか?
A. できません。面接指導は、高ストレスで実施者が必要と認めた人からの申出があって行うものです(労働安全衛生規則 第52条の15、労働安全衛生法 第66条の10 第3項)。
Q. 産業医がいない事業場でも、面接指導は行えますか?
A. 行えます。面接指導をする医師は、産業医である必要はありません(Q&A Q12-1)。50人未満の事業場は、地域産業保健センターに面接指導を無料で依頼することもできます(小規模事業場マニュアル p.15)。
Q. 医師の意見を聴いたあと、何も措置をしなくてもよいですか?
A. 措置の内容には裁量があります。ただし、措置を講じない場合も、医師の意見の衛生委員会等への報告その他の適切な措置は義務で、「何もしない」という選択肢は条文上ありません(労働安全衛生法 第66条の10 第6項)。

参考資料