この記事は、ストレスチェックの実施機関「きしべ」を運営するやりがいラボ合同会社が書いています。
ストレスチェックを外部に委託しようとすると、似たサービスがいくつも見つかり、料金以外にどこを比べればよいのかで迷いやすくなります。厚生労働省のマニュアルがすすめているのは、委託の前に「サービス内容事前説明書」を出してもらい、内容を確かめる方法です。
この記事では、なぜ委託先の確認が必要なのか、事前説明書で何を確かめればよいのか、委託しても事業者に残る仕事は何かを解説します。
なぜ、委託先を自分で確かめる必要があるの?
外部機関が満たすべき要件は、法令で決まっていないためです(Q&A Q17-1)。
厚生労働省の小規模事業場マニュアルは、「労働者のプライバシー保護の観点から、ストレスチェックの実施を外部機関に委託することが推奨されます」としています(p.11)。50人未満の事業場では、外部への委託が現実的な選択肢です。
一方で、どの委託先が制度に沿った形で実施してくれるかは、事業者が自分で確かめる必要があります。そのための道具として、同じマニュアルが「サービス内容事前説明書」を出してもらい内容を確認する方法を示しています(p.13)。
事前説明書で確かめたい7つのポイントは?
料金とあわせて、次の7つを確かめてください。 とくに1・3・4は、制度の根幹に関わります。
| # | 確かめること | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 委託契約に、実施者と実施事務従事者が明示されるか | ストレスチェック指針 第5(2)② |
| 2 | 実施者の資格 | 労働安全衛生規則 第52条の10 第1項 |
| 3 | 面接指導が必要かどうかを、実施者が判断する流れになっているか | 労働安全衛生規則 第52条の15/Q&A Q11-1・Q11-3 |
| 4 | 個人の結果が、会社にどう届くか | 労働安全衛生法 第66条の10 第2項/労働安全衛生規則 第52条の13 第1項 |
| 5 | 面接指導を誰が、どう行い、意見書まで出すか | 労働安全衛生法 第66条の10 第3項・第5項 |
| 6 | 記録をどこで、何年、どう保存するか | 労働安全衛生規則 第52条の11 |
| 7 | 集団分析を、どの単位で、どう行うか | 労働安全衛生規則 第52条の14 第1項 |
1. 実施者と実施事務従事者が契約で明示されるか
事業者は、委託先の実施者・実施事務従事者(共同実施者・実施代表者がいればその人も)を契約で明示させる必要があります。事務だけを委託する場合も、実施事務従事者の明示が要ります。
2. 実施者の資格
実施者になれるのは、医師・保健師と、所定の研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師に限られます。
3. 面接指導の要否を、実施者が判断するか
面接指導の対象は、高ストレス者のうち実施者が必要と認めた人です。高ストレスの判定だけで自動的に対象者を決めて通知する仕組みは「不適当」とされています(Q&A Q11-3)。
4. 個人の結果が、会社にどう届くか
本人の同意なく、個人の結果を事業者に渡すことはできません。同意は書面または電磁的な方法で取り、受検の前や受検のときに取ることはできません(ストレスチェック指針)。
5. 面接指導と意見書
面接指導は医師が行います。オンラインの場合は映像を使い、電話では行えません(Q&A Q12-4)。面接指導の後、事業者は医師の意見を聴く必要があります。費用は事業者が負担し、保険診療にはできません(Q&A Q0-5・Q12-5)。
6. 記録の保存
本人の同意がない個人の結果は、委託先の実施者側で保存します(5年間が望ましいとされています)。事業者には、その保存が適切に行われるよう必要な措置を講ずる義務があります。契約が終わったときの扱いもあわせて確認してください。
7. 集団分析
集団分析は努力義務です。「10人」の下限は、在籍者数ではなく受検者数で数えます(小規模事業場マニュアル p.26)。
10人を下回る集団について、ストレスチェック指針は、個人が特定されるおそれのない方法(平均値や仕事のストレス判定図など)であれば、事前に社内で手法と規模を話し合い規程に定めることを条件に、結果を事業者に渡せるとしています(指針 第11(4)ア、Q&A Q15-1・Q15-4)。一方、2026年2月の小規模事業場マニュアルは「原則として集団分析を実施しないでください」と書いています(p.32)。委託先がどう扱うのか、事前に聞いておくと安心です。
委託しても、事業者に残る仕事は?
次の9つは、外部に委託しても事業者に残ります。 どこまで手伝ってもらえるかも、あわせて確かめてください。
- 関係労働者の意見を聴く機会を設ける(50人未満の場合。労働安全衛生規則 第23条の2)
- 委託契約で、委託先の実施者・実施事務従事者を明示させる(ストレスチェック指針 第5(2)②)
- 委託先の実施体制・情報管理体制を事前に確認する(ストレスチェック指針 第12(3))
- 実施規程を定め、労働者に周知する(ストレスチェック指針 第5)
- 記録の保存が適切に行われるよう、必要な措置を講ずる(労働安全衛生規則 第52条の11)
- 面接指導をする医師に、労働時間などの勤務の情報を渡す(ストレスチェック指針 8(3))
- 医師の意見を聴き、就業上の措置を検討する(労働安全衛生法 第66条の10 第5項・第6項)
- 面接指導の結果の記録を5年間保存する(労働安全衛生規則 第52条の18)
- 労働基準監督署への報告(常時50人以上の事業場のみ。労働安全衛生規則 第52条の21)
まとめ
外部委託先を選ぶときは、委託の前にサービス内容事前説明書を出してもらい、7つのポイントを確かめてください。とくに、実施者が契約で明示されるか、面接指導の要否を実施者が判断するか、個人の結果がどう届くかは、制度の根幹に関わります。
また、委託しても事業者に残る仕事があります。自社で行う、外部に委託する、地域産業保健センターに面接指導を頼む、の3つの頼み方の違いは、次のページで比べています。